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シンプルノットローファー

 ここ数週間探していた本を今日やっと買うことができた。なかなか見つからなくて躍起になって少し遠出した。本棚に目当てのタイトルを探す時はいつもソワソワする。ようやく見つけたそれは、手に取るとやけに重かった。ような気がしたが、気のせいかもしれない。帰りの電車で早々と読んでしまった。

「シンプルノットローファー/衿沢世衣子

シンプルノットローファー

 女子校を舞台にした連作短篇集で、なんの変哲も無いそれぞれの日常が描かれている。ある作品の主人公が、ある作品では脇役だったりして、1クラス分の登場人物がきちんと出てくる。描かれる日常は、あまりに呆気なくて、正直に言うと、特別に面白いというものでもないのかもしれない。それでも自分はその空気感が好きで、ともすれば憧れさえしてしまう。

 ガールフレンドは女子校出身で、自分が興味津々に色々と聞いては「夢見すぎだよ」と笑う。「女子校の女子は女子じゃない」なんて言う。けれど、たとえそれが事実だとしても、それすら含めて、神秘的だなと思ってしまうし、やっぱり憧れてしまう。女子校に過度の神秘さを感じる自分を、彼女はいつも少し呆れている。

 つまりはそういうことで、少なくとも自分は、そこに勝手に意味を与えてしまうのだ。何も無い日常に、何も無いということの意味を与えて、やがて憧れてしまう。きっと、この本の中で起きていたことも、ガールフレンドが過ごした日常も、それは単なる日常であり、その中の一コマであるのだが、きっと自分は彼女ら以上にそこに意味を与えてしまうのだ。

 電車を降りると、雪は止んでいたけれど、寒さはますます強くなって顔に張り付いた。本の感想を反芻しながら歩く自分の姿と、雪を踏む音だけが響く夜のその寒さを重ねて、また何か意味を与えようとしている自分に気がつき、この時ばかりは自分でもさすがに少し呆れた。

けれど今日は、それくらい寒かったのだ。