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金田一耕助の魅力

ところで、ここしばらくの間、ひそかに金田一耕助バイバルの気運が高まってやしませんか?気のせい?でも、金田一耕助シリーズDVDコレクションが発売されてましたし…。それに、長谷川博己主演で「獄門島」がリメイクされたし…。そういえばつい先日は犬神家の再放送がテレビでやっていましたし…。うむ、やはり、波が来ている…!

僕はこの金田一耕助シリーズが大好きでありまして。そこでまたとないこの機会に、その魅力を切々と語りたいなと思った次第であります。

推理作家 横溝正史が生んだ稀代の名探偵、それが金田一耕助。彼の出てくる作品としては「犬神家の一族」や「八つ墓村」が非常に有名ですね。ぼさぼさの髪の毛に貧相な体躯、よれよれの着物によれよれの袴を合わせた冴えない男として描かれる彼ですが、解決した事件は数知れず。金田一耕助シリーズの魅力は、この男、金田一耕助の魅力に他ならないと僕は思うわけです。

本シリーズに特徴的なのが事件の陰惨さ。田舎の因習や血族の因縁が事件の根幹を為していることが多く、そこには長年に渡る悲しみや憎悪がうごめいています。そんなおどろおどろしい背景を持った凄惨な事件の中を軽々と飛び回るのが金田一耕助なのです。言ってしまえば、彼は謎にしか興味がない。謎を解くことだけが彼の全てなのです。

そんな金田一も、謎を解き終えるといつもひどい憂鬱を覚えます。人の罪を暴くことをもって身の生業としている自分に、嫌悪感を抱き、孤独感を覚えてしまうのです。しかし、こうした孤独から彼を救ってくれるのは、皮肉なことにまた新たな別の事件であり、新たな「謎」なのです。金田一は謎を求めてさすらい続けます。謎だけが彼を満たしてくれるのです。彼は謎の中だけでしか生きられないのかもしれません。

そんな探偵としての人間味の無さと、そのことに悩む人間くささ。事件にうずまく人々の感情と、そこを飛び回る金田一耕助。これら二面性が彼の魅力であり、シリーズの魅力なのではないでしょうか。

金田一耕助は最後の作品「病院坂の首縊りの家」にて事件を解決したのちに、日本を出てアメリカへとふらり旅に出る様子が描かれています。それが金田一に関する最後の記述です。金田一耕助はいまどこで何をしているのか。謎の中でしか生きられない金田一。「謎」が消えることのない世の中。いまもまたどこかで謎を求め続ける金田一を、想像するより他にありません。